糖尿病内科
糖尿病に関するQ&A
Q1. 糖尿病とはどんな病気ですか?
A. 血液に糖が溢れ、全身の血管を傷つける病気
私たちが毎日美味しく食べているご飯やパン、麺類などの炭水化物は、胃や腸で消化されると「ブドウ糖」という生命維持に欠かせないエネルギーの素に分解され、血液の中に吸収されます。この血液中に溶け込んだブドウ糖のことを「血糖」と呼びます。
血糖が全身の細胞に運ばれると、すい臓という臓器から「インスリン」という大切なホルモンが分泌されます。細胞にはブドウ糖を取り込むためのドアがあり、インスリンはそのドアを開ける「鍵」の役割を果たしています。健康な状態であれば、この鍵がスムーズに働き、血液中のブドウ糖は細胞にすっきりと吸収され、適正な血糖値(おおむね100前後)が保たれます。
しかし、何らかの原因で「すい臓が疲弊してインスリン(鍵)を作る量が減ってしまう」ことや、「肥満や運動不足によって細胞の鍵穴がサビついてしまい、インスリンがうまく働かなくなる(これをインスリン抵抗性といいます)」ことがあります。すると、細胞のドアが開かず、行き場を失ったブドウ糖が血液中にどんどん溢れ返ってしまいます。これが「糖尿病」の正体です。
血液中に糖が溢れている状態が長く続くとどうなるでしょうか。過剰な糖は、まるでヤスリのように血管の内側を傷つけ、血管をサビつかせていきます。私はこれまで大学病院や地域の中核病院で数多くの患者さんを診てきましたが、糖尿病の本質は単なる「尿に糖が出る病気」などではありません。「全身の血管が内側から静かに、そして確実に壊されていく恐ろしい病気」なのです。だからこそ、血管がまだ柔らかく守られているうちから、早期に治療介入することが極めて重要になります。
Q2. 初期にはどんな症状が出ますか?
A. 初期は無症状!気づかぬうちに進行する病気
糖尿病になる一歩手前の段階を「耐糖能異常(IGT)」や「空腹時血糖異常(IFG)」といい、いわゆる「糖尿病予備軍」と呼ばれます。実はこの予備軍の状態が5年から8年ほど長く続いたあとに、本格的な糖尿病を発症すると言われています。
最も恐ろしく、そして皆さんに強くお伝えしたいのは、この予備軍の時期や糖尿病の初期段階では「自覚症状がまったくない」ということです。痛みもかゆみもないため、健康診断で「血糖値が高めですね」と指摘されても、つい放置してしまう方が後を絶ちません。しかし、症状がない間にも血管の破壊は確実に進行しています。
唯一のSOSサインとして現れやすいのが、食後に急激に血糖値が跳ね上がる「血糖値スパイク」による症状です。食後に抗えないほどの強い眠気に襲われたり、だるくなったり、しっかり食べたはずなのに食後2〜3時間ですぐに小腹が空いたりする場合は要注意です。
そのまま病気が進行し、慢性的に血糖値が高い状態になると、ようやく明確な症状が現れます。血液中の大量の糖を尿として排出しようとするため「おしっこの回数が増える(多尿)」、それに伴い水分が失われて「異常にのどが渇く(口渇・多飲)」といった症状です。さらに、エネルギーが細胞に届かないため「常に疲れやすい」、免疫力が落ちて「ケガが治りにくい」「皮膚がカサカサしてかゆい」、血流悪化による「男性機能の問題(ED)」なども見られます。
仕事が忙しく、外食や不規則な生活を余儀なくされている40代から50代のビジネスパーソンの方々は、まさにリスクのど真ん中にいます。ご家族に糖尿病の方がいる場合も遺伝的な体質を受け継いでいる可能性が高いため、症状が出る前に、まずはご自身のお体の状態を知ることから始めてみてください。
Q3. 放置するとどうなってしまうの?
A. 失明や透析、心筋梗塞など命を奪う事態に!
糖尿病を治療せずに放置し、血管がボロボロになってしまうと、全身のあらゆる臓器に取り返しのつかない「合併症」を引き起こします。
まずは細い血管が集中している場所から壊れていく「3大合併症」が現れます。 眼の奥の細い血管が傷つくと「糖尿病性網膜症」となり、ある日突然、視力低下や失明を引き起こします。腎臓のろ過フィルターである毛細血管が壊れると「糖尿病性腎症」となり、老廃物を尿として出せなくなります。末期になれば週に3回、1回数時間拘束される人工透析が必要な体になってしまいます。さらに、神経に栄養を送る血管が傷つくと「糖尿病性神経障害」となり、足の裏に紙が貼り付いたような違和感から始まり、激しいしびれや痛み、最悪の場合は足が腐って切断に至ることもあります。
さらに太い血管が傷つくと、動脈硬化が一気に加速します。心臓の血管が詰まれば「狭心症や心筋梗塞」、脳の血管が詰まれば「脳梗塞」、足の太い血管が詰まれば「末梢動脈疾患(PAD)」となり、命に直結する事態を招きます。
そして、地域医療を担う私が最も危惧しているのが「免疫力の著しい低下」です。高血糖は、体内の細菌と戦う白血球の働きを麻痺させます。そのため、健康な人なら跳ね返せるような細菌やウイルスに感染しやすくなり、地域の皆様の命を奪う「肺炎」の重症化リスクが跳ね上がるのです。また、がん、認知症、うつ病、歯周病、骨粗しょう症との関連も深く、全身の健康を根底から奪い去るのが糖尿病の真の恐ろしさです。
Q4. 検査は痛いですか?時間は?
A. 当日結果が判明!少量の採血で過去の数値も
「糖尿病の検査は大がかりで痛いのでは」と不安に思われるかもしれませんが、基本的には少量の採血のみで終了します。当院では、朝食を抜いてご来院いただければ、院内の検査機器を用いてその日のうちに結果をお伝えし、すぐに方針をご相談することが可能です。
診断は、ガイドラインに基づき以下の基準で行います。 ①空腹時の血糖値が126mg/dl以上 ②75gのブドウ糖が入った甘いサイダーのような検査薬を飲み、30分後、1時間後、2時間後に採血をして、2時間後の血糖値が200mg/dl以上 ③食後など随時測った血糖値が200mg/dl以上 ④ヘモグロビンA1c(HbA1c)が6.5%以上
これらの中で④が必須項目となり、①〜③のいずれかに当てはまれば糖尿病と診断します。この「ヘモグロビンA1c」とは、赤血球の中にあるタンパク質(ヘモグロビン)にどれくらい糖が結びついているかを見るものです。直近の食事に左右されず、過去1〜2か月の血糖値の平均を正確に反映するため、患者さんの状態を把握する「通信簿」のような非常に大切な数値となります。
さらに当院では、血中インスリン(IRI)、Cペプチド(CPR)、抗GAD抗体といった専門的な外注検査も行います。これにより、「インスリンを作る工場が疲れているのか」「インスリンへの反応が鈍くなっているのか」といった根本原因を明確にし、一人ひとりに合わせた完全オーダーメイドの治療方針を組み立てます。また、最近では腕に500円玉サイズの小さなセンサーを貼るだけで、24時間ご自身のスマホで血糖値の変動を確認できる「FreeStyleリブレ」という機器も非常に有用です。ご自身の生活のどの場面で血糖値が上がっているのかが視覚的にわかるため、モチベーションアップに大きくつながります。
Q5 糖尿病の食事・運動療法のコツは?
A. 食事は一日三十品目の健康長寿食が鍵!
運動は現代の万能薬!週百五十分の有酸素運動を!
まず薬物療法を始めるにしても最も大事なのは食事療法、運動療法です。これだけを食べれば問題ないこの運動だけをすれば大丈夫といったことはありませんので過剰な情報に惑わされないように注意しましょう。ライフスタイルに合わせたアドバイスを適切に行わせていただきます。ひとつポイントとしていえることは受診による動機付けを行い生活習慣を改善し、それを少しずつでも継続することです。
糖尿病の食事療法のポイント
1.糖尿病の食事療法は健康長寿食と考えましょう!
3食きちんと食べ必要な栄養素はしっかり摂るというのが基本です。朝食を抜いたりすると次の食事で血糖が急激に上がりやすくなり血糖スパイクをおこし血管を傷つけやすくなります。
現在の日本人の食事ではカルシウム・マグネシウム・亜鉛などのミネラル、食物繊維、ビタミンA・B1・B2・Dなどが不足しがちといわれています。日本糖尿病学会発行の食品交換表を目安に一日30品目以上摂るように心がけましょう。炭水化物は控えめに、野菜やきのこ、海藻、果物、コンニャクなどを意識的に加えるのもよいでしょう。肉類に関しては豚肉や牛肉よりは魚介類を多めに摂った方ω3脂肪酸を多く摂ることができ糖尿病にもよいとするエビデンスも報告されています。血糖値が上がりにくいとされる日本食や地中海食に目をむけてみるのもよいでしょう。
2.目標体重を目安に摂取カロリーを決定する
目標体重はそれぞれの年齢、筋肉量、活動量などの違いがあり、なかなか同じというわけにはいきません。一つの目安として患者さんご自身の20歳前後の体重を目標体重とするのもよい方法と考えます。
しごく当然のことですが食べ過ぎれば太りますし、摂取カロリーが消費カロリーを下回れば痩せます。週2回程度は体重計に乗り目標体重に近づくように食事量を調整するのも一見単純なようですが効果的と考えています。
「目標体重の目安の計算式」は以下のようになります。糖尿病診療ガイドライン2019年からは一律ボディーマスインデックス(BMI)22ではなく年齢別に総死亡率が低いBMIが22~25と幅をもたせるようになっています。
- 65歳未満:〔身長(m)〕2×22
- 65歳~74歳:〔身長(m)〕2×22~25
- 75歳以上:〔身長(m)〕2×22~25*
*75歳以上の後期高齢者では現体重に基づき個人の背景を踏まえ適宜判断する。
例えば66歳の方で身長160㎝の方は
(1.7)2×22~25=56.3kg~64kgとある程度の幅が示されるようになりました。
「総エネルギー摂取量の目安の計算式」は
総エネルギー摂取量(kcal/日)=目標体重(Kg)**×エネルギー係数(kcal/kg)
**原則として年齢を考慮に入れた目標体重を用いる
ここにあるエネルギー係数(kcal/kg)とは下記の数値になります。
【身体活動レベルと病態によるエネルギー係数(kcal/kg)】
①軽い労作(大部分が座位の静的活動):25~30(kcal/kg)
②普通労作(座位中心だが通勤、家事、軽い運動を含む):30~35(kcal/kg)
③重い労作(力仕事、活発な運動習慣がある):35~(kcal/kg)
例えば66歳の方で身長160㎝、軽い労作中心の方は
(1.6)2×22~25×25×30=1407kcal~1920kcalとなります。
3.炭水化物に注意する
食事中の3大栄養素は炭水化物・タンパク質・脂質です。このうち食後血糖に最も関係するのは炭水化物です。一言で炭水化物といってもご飯やパン、麺類、いも類、ポテトチップスなども含まれます。最終的にこれらが体の中でブドウ糖に分解され吸収されることによって血糖値が上がります。食後の血糖の上がり方は糖質の量と質によって決まってきます。厳密にはカーボカウントなどによって糖質摂取量を決めるのが良いとされます。炭水化物は最終的にはブドウ糖に消化され吸収されますが、消化に時間がかかるものほど血糖の上がり方はゆっくりとなります。この食べ物の食後血糖の上がり具合を示した指数をグリセミックインデックス(GI)係数とよびます。例えば食後の血糖の上昇のスピードであるGI係数の高い順番は、ブドウ糖>パン>白米>パスタ>玄米・そばとなり玄米・そばのほうが血糖上昇スピードは遅くなるといった具合です。GI係数やカーボカウント※などをうまく活用するのもよいと考えます。
※カーボカウントとは?
おもにインスリン療法を導入されているかたが使用するもので、食べ物の中に含まれる糖質の量を自分で把握するための指標に使われます。例えばおぎにり1個100gに糖質40gといった具合です。炭水化物量、糖質量を自分で把握することは糖尿病治療において非常に重要と考えています。
4.清涼飲料水・お菓子などは極力控える
例えばペットボトル1本の清涼飲料水に砂糖が20~60g程度、缶コーヒー1本に15g程度、ポテトチップス1袋に30g程度、アイスクリーム1本に20g程度含まれるとされます。参考までに角砂糖1個に含まれる砂糖は3~4gです。これらには、すさまじい量の砂糖が含まれていることがご理解いただけるでしょう。さらにジュースなどの液体はより消化吸収が速いので、ジュースを一気飲みした後の血糖値スパイクはペットボトル症候群といわれ非常に高くなり血管を気付つける危険性はますます高くなります。
5.糖尿病食事療法のコツ
ごく簡単にコツをまとめてみます。
①ゆっくり、よくかんで食べる。
②朝食、昼食、夕食を規則正しく食べる。
③バランスよく食べ炭水化物の質と量に注意する。
④食事は腹八分目でストップしておく。
⑤夜遅く、寝る前には食べない。
その他にもいろいろコツのようなものがたくさんありますのでご来院いただき一緒に楽しみながら食事療法のアドバイスなどを行えればと考えています。
文責
院長 大塩 博
糖尿病の運動療法のポイント
様々な交通機関が発達しインターネット環境が整い生活が便利になった反面、現代の日本人は運動不足だといえます。一説によると旧石器時代の1日の歩数は約2万歩あったとされ、文明が発達するに従い運動量も減りそれに伴い糖尿病の罹患率も増加しているとも言えます。
1.運動量が多いと長生きする?
運動量が多いと長生きするのかという疑問もあると思います。旧石器時代は長生きしてないじゃないかと考えるのではないでしょうか。それに対する現代人における運動量と寿命に関する質の高い報告がアメリカからは発表されています。下の図は運動量が多いほど長生きするというものです。
Byberg et al. BMJ, 338, b688. doi:10.1136/bmj.b688
それではどのぐらいの運動がすすめられるのかといいますと、現状いろいろな運動療法がすすめられています。エビデンスレベルの高いガイドラインを参考にするとアメリカの運動ガイドラインからですが下記の運動が推奨されています。
- 座りっぱなしのを避け、時々、多少動きまわる。
- 有酸素運動 : 息が弾む程度の運動を少なくとも150分/週を行う。
- レジスタンス運動(筋トレ) : 週に少なくとも2回行う。
日本の厚生労働省からは1日1万歩歩くことがすすめられています。
注意しなければいけないのは運動すればするほど健康に良いというわけではないということです。上記の運動推奨量からするととてつもなく激しい運動ではありますが週630分から2100分間に運動をすると、ある種の心臓病(不整脈、冠動脈疾患、心臓突然死など)を起こす可能性が高くなる報告もありますのでやりすぎは禁物です。
2.運動療法の効果は?
糖尿病やその予備軍の患者さんでの運動療法にはさまざまなメリットがあります。もちろん、
- 糖尿病の発症予防
- 血糖の改善
- インスリン感受性の増加
- 筋肉へのブドウ糖の取り込みの増加
- 脂質の改善(LDL-C低下、HDL-C上昇)
- 血圧低下
- 心肺機能の向上
- 心血管系合併症のリスク軽減
- 死亡リスクの低下
- 体重減量作用
などがあげられます。意外に思われるかもしれませんが運動療法には
- 癌(結腸・乳房)の発症リスクの低下
- 骨粗鬆症の予防
- 骨密度の改善・うつ病の改善
など多岐にわたり現代人の万能薬といえるかもしれません。
3.糖尿病運動療法のコツ
ごく簡単にコツをまとめてみます。
①週5日150分以上の息が弾む程度の有酸素運動
②週2~3回のレジスタンストレーニング(筋トレ)
③座りっぱなしを避ける
④血糖値が上昇してくる食後15~30分後をねらって運動・家事などを行う。
食事療法同様に他にもいろいろコツのようなものがたくさんありますのでご来院いただき一緒に楽しみながら運動療法のアドバイスなどを行えればと考えています。
Q6 糖尿病の薬には何がありますか?
まず検査で糖尿病の原因をはっきり診断します。糖尿病の原因がインスリンの出る量が少ないのか、インスリンはあるのだけれども細胞内にうまく取り込まれていないのかを判断し治療方針を相談させていただきます。年齢や性別、合併症の有無(心臓が悪い、腎臓が悪い、飲んでいるお薬など)などにより使うお薬を選択します。代表的な使用するお薬を以下に挙げておきますので参考にして下さい。
内服薬(経口血糖降下薬)
①ビグアナイド薬(メトホルミン、メトグルコ、ツイミーグなど)
メトホルミン、メトグルコとして処方されます。体内で分泌されたインスリンの効きをよくするお薬です。糖尿病治療薬の第一選択薬として広く普及しています。量を増やすとそれだけ効きが良くなるという特徴があります。血糖を下げる作用以外に体重減少、悪玉コレステロール低下、心血管系リスク、がんリスクの低減作用があるとされています。低血糖は起こしづらい薬ですが下痢、悪心、腹痛、食欲不振などの副作用の報告があります。乳酸アシドーシスなどの報告もありますが適切に使用していればまず問題となることはないと考えられます。
さらに最近2021年に発売されたツイミーグというお薬もビグアナイド薬に分類されます。メトホルミン同様インスリンの効きをよくする以外にミトコンドリアを介して膵臓に作用し血糖に応じたインスリンを出しやすくする作用を持ったお薬です。副作用として乳酸アシドーシスが起こらないといった特徴もあります。
個人的な見解ですがミトコンドリアの機能を改善するということは筋肉量の増加や他の様々な疾患の改善につながるのではないか、さらに長寿遺伝子への良い影響により健康寿命が延びる可能性が期待できるという夢のようなメリットがあるのではないかと考えています。
人の細胞内のエネルギーを作り出す工場のような役割を担っており体重の約10%を占める細胞内器官です。
②DPP-4阻害薬(ジャヌビア、トラゼンダ、ネシーナ、エクアなど)
まず検査で糖尿病の原因をはっきり診断します。糖尿病の原因がインスリンの出る量が少ないのか、インスリンはあるのだけれども細胞内にうまく取り込まれていないのかを判断し治療方針を相談させていただきます。年齢や性別、合併症の有無(心臓が悪い、腎臓が悪い、飲んでいるお薬など)などにより使うお薬を選択します。代表的な使用するお薬を以下に挙げておきますので参考にして下さい。
ジャヌビア、トラゼンダなどとして処方されます。体の中で作られるインスリンの量を増やすお薬です。2009年から発売され日本人に多いとされるやせ型だが体質的・遺伝的にインスリンの分泌量が少なく血糖値が高くなりやすい方に重宝されています。メトホルミンと並んで最もポピュラーな糖尿病のお薬の一つです。
他の糖尿病のお薬と比べて副作用が比較的少ない点がメリットではありますが水膨れを伴う皮疹(類天疱瘡)には注意する必要があります。
③SGLT2阻害薬(フォシーガ、ジャディアンス、スーグラ、カナグルなど)
フォシーガ、ジャディアンス、スーグラなどとして処方されます。腎臓から血液中の糖を漏れ出させるお薬です。2014年から発売され今までの糖尿病のお薬とは違いインスリンを介さずに血糖を下げます。腎臓から出ていく糖分は一日に60g~100gとされます。血糖を下げる以外に体重減少、糖分と一緒にナトリウムもおしっこに出すため血圧降下作用、腎臓・心臓の保護作用もあるとされます。副作用には尿路感染や脱水、骨折などさまざまな報告があり医師管理のもとの飲むことが勧められます。低血糖は起こしにくいとされ肥満傾向の方、心臓が悪い方、腎臓が悪い方に適したお薬です。
④αグルコシダーゼ阻害薬(ベイスン、セイブル、アルカボースなど)
ベイスン、セイブル、アルカボースなどとして処方されます。炭水化物のブドウ糖への分解を遅らせるお薬です。食後の血糖の上昇(血糖スパイク)を抑える働きがあり糖尿病へ移行しにくくするというエビデンスがあります。糖尿病予備群(境界型糖尿病)の方でも保険適応のあるお薬です※。低血糖は起こしにくいとされ副作用としておならが増えるなどがあります。手術歴のある方や高齢者などには腸閉塞への注意が必要です。
※境界型糖尿病- 空腹時血糖が110-125mg/dl
75gブドウ糖を飲み2時間後に採血を行い血糖値が140-199mg/dl - ヘモグロビンA1c(HbA1c)が6.5%未満
- GLP-1受容体作動薬、GIP/GLP1受容体作動薬(リベルサス、トリルシティー、ビクトーザ、マンジャロなど)
2021年リベルサスが発売されて飲み薬として処方できるようになりました。注射薬としてトリルシティー、ビクトーザ、オゼリンピック、マンジャロ(GIP/GLP1受容体作動薬)として使用されるケースが多い薬剤です。GLP-1は食事を摂ると小腸から出てくるホルモンでインスリンを出しやすくします。胃の動きを遅くしたり食欲を抑える働きがあり、結果として血糖が下がります。体重減少・腎臓・心臓の保護作用もあるとされています。低血糖は起こりにくいですが使い始めに吐き気、下痢、便秘などが起こることがあります注意が必要です。内服薬や週一回注射など使い方がいろいろありますので気軽にご相談ください。
⑤チアゾリジン(アクトスなど)
アクトスなどとして処方されます。脂肪細胞を小型化させることにより大型の脂肪細胞が出していたインスリンの効きを悪くするホルモンを減らします。それにより全身の細胞のインスリンの効きを良くして血糖を下げるとされています。インスリンの効きが悪い肥満の糖尿病のかたに使用されます。
脂質を下げ脂肪肝を改善したり、脳梗塞や心筋梗塞などのリスクを下げる効果があるとされます。むくみ、体重増加などの副作用があることから心臓の悪い方に使用する場合は注意が必要です。
⑥グルニド薬(グルファスト、シュアポスト、スターシスなど)
グルファスト、シュアポスト、スターシスなどとして処方されます。直接膵臓に働きかけてインスリンを分泌させるお薬です。日本人の耐糖能異常(IGT)の方に多いとされる「食事摂取後のインスリンが放出されるタイミングが血糖が上がってくるのに比べて遅い」という特徴にあわせ作用が速く短時間だけ作用する薬です。食後の急激な血糖の上昇(血糖スパイク)を抑える効果があります。副作用としてインスリンを分泌させるお薬なので低血糖症状には注意が必要です。
⑦スルホニル尿素薬(SU薬)(アマリール、グリミクロン、オイグルコンなど)
アマリール、グリミクロン、オイグルコンなどとして処方されます。現在第3世代のSU薬までありますが50年以上の歴史があり古くから糖尿病治療に使われてきたお薬です。グルニド薬と同様、直接膵臓に働きかけてインスリンを分泌させるお薬です。SU薬はグルニド薬に比べゆっくり長く聞くといった特徴があり1日1回の投与で効果が期待できることもあります。アマリール0.5mg1日1回といった使用方法でも効果が期待できます。副作用としては内服糖尿病治療薬の中で最も低血糖症状には注意が必要です。
⑧GLP-1、GIP/GLP-1受容体作動薬(リベルサス、マンジャロ、ウビーゴなど)
【最新の注射剤(GLP-1、GIP/GLP-1受容体作動薬)】
近年、糖尿病・肥満治療の歴史を塗り替えるような画期的な注射剤(一部内服薬もあり)が登場しています。私は肥満治療や胃の外科手術に関する学会で座長を務める機会も多いのですが、これらの新薬がもたらす恩恵は計り知れないと実感しています。
・マンジャロ(GIP/GLP-1受容体作動薬):現在「最強クラス」とも呼ばれる週1回の注射薬です。GIPとGLP-1という2つのホルモン受容体に同時に働きかけることで、劇的に血糖値を下げるだけでなく、食欲を自然に抑えて非常に強力な体重減少効果を発揮します。
・ウゴービ(GLP-1受容体作動薬):こちらは糖尿病の薬と同じ成分(セマグルチド)ですが、「肥満症」の治療薬として特別に認可された週1回の注射薬です。高血圧や脂質異常症を伴う高度な肥満の方に対し、体重を減らすことで将来の糖尿病や心疾患を防ぐ目的で使用されます。
注射と聞くと恐怖を感じるかもしれませんが、現在のペン型注射器の針は髪の毛ほどの細さで、痛みはほとんどありません。ライフスタイルに合わせ、最も負担が少なく最大の効果が出る治療を一緒に選んでいきましょう。
なぜ早期の受診と継続的な通院が必要なの?
糖尿病治療の最大の目的は、ただ血糖値を下げることではありません。「健康な人と変わらない寿命と、質の高い人生(QOL)を全うしていただくこと」です。
私が勤務医時代に痛感してきたのは、「もっと早く治療を始めていれば、失明や透析、足の切断は防げたのに」という後悔の涙です。糖尿病はサイレントキラーです。痛みがなく進行するため、治療を途中でやめてしまう方が多いのも事実です。しかし、高血糖を放置すれば免疫力が落ち、私の最大の使命でもある「肺炎予防」の観点からも命の危険に直面しやすくなります。
また、糖尿病の患者さんは、胃がんや大腸がんなどの発症リスクも高くなることが分かっています。だからこそ、糖尿病の治療と並行して、当院で実施している痛みの少ない「胃カメラ」「大腸カメラ」などの定期的な検査を行い、全身をトータルで守っていくことが不可欠なのです。
「ちょっと最近太ってきた」「健診で引っかかったけれど症状がないから大丈夫」と思っている今こそが、一生の健康を守る最大のチャンスです。私たちが全力でサポートしますので、どんな些細なことでもお気軽にご相談にいらしてください。
【参考・引用ガイドライン・文献一覧】
・日本糖尿病学会 編『糖尿病診療ガイドライン2019』『糖尿病治療ガイド2022-2023』
・厚生労働省『健康日本21(第二次)』および身体活動基準
・American Diabetes Association (ADA) "Standards of Medical Care in Diabetes"
・日本消化器内視鏡学会 ガイドライン(糖尿病患者におけるスクリーニング内視鏡検査の重要性について)
文責:青葉おおしお総合クリニック 院長 大塩 博
