ヘリコバクター・ピロリ菌感染
ピロリ菌に関するQ&A
Q1 ピロリ菌に感染するとどんな症状がでますか?
症状で多いのはお腹の痛み、胸やけ、胃のむかつき、吐き気、お腹が張り、ゲップ、⾷欲不振などとされています。無症状で経過する方もかなり多くピロリ菌の早期発見には少しの胃の不調も放置しないことが重要です。
Q2 ピロリ菌はどんな菌ですか?
Proc Natl Acad Sci U S A. 2021 Mar 30; 118(13): e2026337118. Published online 2021 Mar 22. doi: 10.1073/pnas.2026337118
ピロリ菌の正式な名前はヘリコバクター・ピロリです。ヘリコはヘリコプターのヘリコと一緒で「らせん・回転」の意味です。バクターはバクテリアで「細菌」、ピロリは胃の出口をピロルスと呼びますがそこからきています。昔、理科の実験で塩酸は危険で皮膚を溶かすから注意するように学校の先生からおどろかされた記憶があります。胃酸は塩酸よりも強い酸で、さすがにそこには細菌はいないだろうというのが常識でした。しかし1983年に胃酸からピロリ菌を見つけたのがオーストラリア医師のウォーレンとマーシャルで、その2人は2005年にノーベル賞を受賞されています。その後、胃炎、潰瘍、胃がんなどいろいろな病気の原因であることがわかりますます注目されるようになったのがピロリ菌というわけです。
Q3 ピロリ菌はどこで感染するのですか?
感染経路は現在もよくわかっていませんが、衛生環境が整備されていない時代や地域などの経口感染や幼少期に離乳食の口移しなどによるのではないかといわれています。そして、感染するのは免疫力の低い主に5~6歳以下の幼児期とされていますが大人が感染しないわけではありません。一度感染すると一生ピロリ菌が胃内に住み着くとされています。
日本人のピロリ菌の感染者数は少なくとも3,000万人以上といわれています。10~20代では10%前後、50代以上の人では40%程度、60歳以上では60%程度と年齢が高いほど感染率も高いことが報告されています。
Q4 ピロリ菌に感染するとどんな病気になりますか?
現在までに胃・十二指腸潰瘍、胃がん、胃MALT(マルト)リンパ腫、特発性血小板減少性紫斑病(免疫性血小板減少症)などと関連があるとされています。WHO(世界保健機関)ではピロリ菌を確実な発がん因子とは発表しています。
特に胃がんとの関係性は有名で、日本人の胃がんの約99%がピロリ菌感染が原因とされています。ここで大切なことは、早期胃がんの患者さんにピロリ菌を除菌したら他の場所にできる胃がんが3分の1になったと報告されていますがゼロにはなっていないことです。除菌したら胃がんにならないというわけではないので除菌後も定期的な胃の内視鏡検診は必ずうけましょう。
Q5 ピロリ菌検査はどのように行うのですか?
診断薬を飲んでいただきバックに息を集めて診断する方法(尿素呼気試験法)が主流で、20分程度で結果が出ます。その他、採血・採尿によるピロリ菌の抗体を測定する方法(抗体測定法)、便中のピロリ菌の抗原を調べる方法(糞便中抗原測定法)などがあります。今飲んでるお薬などによりできない検査もありますので相談させていただきながら検査を行います。
Q6 除菌療法はどのように行なうのですか?
保険で除菌療法を行うには胃内視鏡検査が必要です。
最初に行う除菌を一次除菌といいます。胃酸を抑える胃薬と2種類の抗生物質(アモキシシリンとクラリスロマイシン)の計3種類の薬を朝・夕2回、7日間服用します。1‐2ヶ月後再検査を行い一次除菌でだいたい70%-90%の方は除菌に成功します。二次除菌は3種類の薬のうちクラリスロマイシンをメトロニダゾールに変更して同様に7日間服用します。一、二次除菌合わせると97‐98%の除菌が成功するといわれています。三次除菌も保険適応外ですが行うことはできますのでご相談ください。