高血圧症
こんな症状ありませんか?
- 頭痛
- めまい
- 耳鳴り
- いびき
- 日中の眠気
- 不眠
- 動悸(心臓の拍動を強く感じる)
- 胸、首、耳のドキドキ感
高血圧症に関するQ&A
Q1 なぜ血圧が高いと治療しないといけないのですか?
血圧が高いと健康に良くないとなんとなく思っている方は多いのではないでしょうか。
日本人の高血圧症の患者さんは約4300万人いるとされており約3人に1人が高血圧症ということになります。
年齢が上がるにしたがいその割合も増えていきます。
高血圧症は別名サイレントキラーと呼ばれ自覚症状が少ないのが特徴であり検診などで高血圧を指摘されてから病院を受診するまでには約3年かかるとされており放置されやすい疾患であるということが分かります。
長期的には、血圧が高い状態が継続するとそれが血管を傷つけ全身の血管に動脈硬化が生じ、脳卒中、心臓病、腎臓病、目の病気などを引き起こします。
厚生労働省が行った「21世紀における国民健康づくり運動(健康日本21)」では、血圧の治療により20mmHg低下させると死亡率が男性18%女性21%予防され、国民の平均血圧が2mmHg低下すると日本国民の脳卒中死亡者が1万人減少するなどと報告されています。
また、中高年の方で収縮期血圧が160 mmHgの人は120mmHgの人と比べると心血管死亡リスクが5.21倍※、脳梗塞の発症リスクが約3.5倍、脳出血の発症リスクが6.1倍高くなるといった報告があります。
さらに最近の研究では160 mmHgの人は120mmHgの人と比べると認知症を発症する割合が10倍高かったとの報告もあり注意が必要です。
※Fujiyoshi, Aet al,Hypertens Res, 35(9), 947-953. doi:10.1038/hr.2012.87
高血圧治療ガイドライン2019より
Q2 高血圧症になるとどんな症状が出ますか?
通常自覚症状を認めないことが多いです。
血圧が180mmHgを超えると頭痛、めまい、動悸、耳鳴り、不眠、胸・首・耳のドキドキ感などが認められることがあります。
高血圧の早期発見・治療のために健康診断・人間ドックの受診や自宅での血圧測定などを行いお早めにご相談ください。
Q3 高血圧症の原因はなんですか?
高血圧症には大別すると本態性高血圧症と二次性高血圧症の2種類があります。
本態性高血圧は全体の9割以上を占める高血圧であり、体質が遺伝することが多いとされています。
遺伝が高血圧症の発症に関与する割合は30%~60%と言われています。
さらに、加齢に伴う動脈硬化や生活習慣が原因ともされ、塩分の摂りすぎ・運動不足・ストレスなどにより起こるとされています。
一方、二次性高血圧とは甲状腺や副腎などの病気が原因の高血圧で、その病気を治療することで高血圧もなおります。
以下二次性高血圧の代表的な原因を上げておきます。
二次性高血圧の原因
- 腎実質性高血圧(腎実質性疾患・慢性腎臓病などの腎機能の低下に伴うもの)
- 腎血管性高血圧(腎動脈狭窄に伴うもの)
- 内分泌性高血圧(血圧を調整するホルモンのバランスが崩れるもの:原発性アルドステロン症、クッシング症候群、褐色細胞腫 甲状腺機能障害など)
- 睡眠時無呼吸症候群(SAS)
- 薬物性高血圧(ステロイド・非ステロイド性抗炎症薬・甘草・エストロゲン・抗うつ薬など)
本態性高血圧か、二次性高血圧かどうかは、血液検査や超音波検査などを行わないと分からない場合が多いのです。
「通常の血圧を下げるお薬に反応がしにくい人」、「ここ数年の検診で血圧が上昇してきた人」、「比較的若い人で高血圧を指摘された人」、「高血圧以外の身体の異常や自覚症状を認める人」などがある場合、二次性高血圧の精査を行った方がよいと考えますので気軽にご相談ください。
Q4 高血圧症はどのように診断しますか?
日本の高血圧の基準は収縮期血圧140mmHg以上かつ/または拡張期血圧90mmHg以上です。
リスクごとに詳細に日本高血圧学会が定めた以下の基準が使用されています。
診察室血圧が少し高く設定されていることがポイントです。
高血圧の診断基準(診察室血圧)
- 正常血圧 <120 かつ <80
- 正常高値血圧 120~129 かつ <80
- 高値血圧 130~139 かつ/または 80~89
- Ⅰ度高血圧 140~159 かつ/または 90~99
- Ⅱ度高血圧 160~179 かつ/または 100~109
- Ⅲ度高血圧 ≧180 かつ/または ≧110
- (孤立性)収縮期高血圧 ≧140 かつ <90
(アンダーラインが高血圧)
高血圧の診断基準(家庭血圧)
- 正常血圧 <115 かつ <75
- 正常高値血圧 115~124 かつ <75
- 高値血圧 125~134 かつ/または 75~84
- Ⅰ度高血圧 135~144 かつ/または 85~89
- Ⅱ度高血圧 145~159 かつ/または 90~99
- Ⅲ度高血圧 ≧160 かつ/または ≧100
- (孤立性)収縮期高血圧 ≧135 かつ <85
(アンダーラインが高血圧)
Q5 高血圧症の治療にはどのようなものがありますか?
糖尿病の治療と同じように、まず薬物療法を始めるにしても最も大事なのは食事療法、運動療法です。
特に高血圧症の場合重要になってくるのが食塩摂取量を減らすことです。
高血圧治療ガイドライン2019でも生活習慣の修正・食塩の制限と最初に記載されており食塩を6g/日未満とすることがすすめられています。
平成28年度国民健康栄養調査では、20歳以上の日本人が1日に摂取している食塩の量は、男性10.8g、女性9.2gとのことです。
塩分の摂取量と血圧の上昇には強く関係しており、塩分の摂取量を減らすとほとんどの人が数週間以内に血圧が下がり始めるとされています。
なぜ塩分を多く摂ると血圧が上がるかといいますと塩分には水分を血管内にためておく作用があり、その結果体の中の血液の量が増え血圧が上がるといった具合です。
塩分は腎臓から排泄されますので腎臓が悪い人はさらに血圧が上がります。
すぐにでもできる減塩のポイントを以下にまとめてみました。
減塩のポイント
- 塩分の多い加工食品を避ける。
- 通常カップ麺には5‐7g程度の食塩が入っており購入する際に塩分量を確認する。
- ラーメンのスープを全部飲まない。
- 減塩しょうゆなどの減塩食品をうまく活用する。
Q6 高血圧症の薬には何がありますか?
年齢や性別、合併症の有無(心臓が悪い、腎臓が悪い、飲んでいるお薬など)などにより使うお薬を選択します。
内服薬の種類ごとに薬の作用機序、血圧をどのくらい下げるか、どのくらいの時間効いているか、副作用、血圧を下げる以外の体への良い効果が異なります。
代表的な使用するお薬を以下に挙げておきますので参考にして下さい。
①カルシウム拮抗薬(アムロジン、アダラート、カルブロックなど)
アムロジン、アダラートなどとして処方されます。
The降圧薬といった位置付けでしょうか。
カルシウムが心臓や動脈などの平滑筋細胞に入るのを抑えるお薬です。
カルシウムが細胞内に入ると、平滑筋は収縮するため、それをカルシウム拮抗薬でブロックすると血管は広がり血圧が下がるというわけです。
カルシウム拮抗薬は、いろいろな降圧薬の中で最も降圧作用が強く、副作用も少ないため日本国内で最も多く使われている降圧薬です。
副作用は少なめですが動悸、頭痛、ほてり、顔面の紅潮、むくみ、吐き気、便秘、歯ぐきのはれ、などを認めることがあります。
②アンジオテンシン変換酵素阻害薬(レニベース、タナトリル、エースコールなど)
レニベース、タナトリルなどとして処方されます。
ACE阻害薬とも呼ばれます。
血圧を上げる作用を持たないアンジオテンシンⅠを、血圧を上げる作用を持つアンジオテンシンⅡへの変換するのを妨げるお薬です。
アンギオテンシンⅡを作らせないようにして血圧を下げます。
ACE阻害薬は、Ca拮抗薬と同じく使用されることの多いお薬です。
血圧を下げる以外の体への良い作用として特に心臓や腎臓やの臓器保護作用、尿蛋白の減少作用があるとされており、心不全、腎臓病、糖尿病などをもつ方に良いお薬です。
副作用としては乾いた咳が有名ですが継続して内服することにより改善することがあります。
めまい、動悸、高カリウム血漿、非常にまれではありますが急にくちびる、まぶた、口の中が大きくはれるなどを認めることがあります。
ACE阻害薬は、胎児に悪い影響があり妊娠中は内服できません。妊娠の可能性のあるかたは医師にご相談下さい。
③アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(オルメテック、ミカルディス、ブロプレスなど)
オルメテック、ミカルディスなどとして処方されます。
ARBとも呼ばれます。
アンジオテンシンⅡが血管に働くところを抑え血管を広げることにより血圧を下げます。
ARBの血圧を下げる効果は、お薬により多少違いはありますがACE阻害薬と同等程度であり、ACE阻害薬よりも副作用が少ないため、よく使用されている薬です。
ACE阻害薬と同じく血圧を下げる以外の体への良い作用として特に腎臓や心臓などの臓器保護作用、尿蛋白の減少作用があるとされており、腎臓病、心不全、糖尿病などをもつ方に良いお薬です。
副作用としてめまい、動悸、高カリウム血症、非常にまれではありますが急にくちびる、まぶた、口の中が大きくはれるなどを認めることがあります。
ARBはACE阻害薬同じように、胎児に悪い影響があり妊娠中は内服できません。
妊娠の可能性のあるかたは医師にご相談下さい。
④直接的レニン阻害薬(ラジレス)
ラジレスとして処方されます。DRIとも呼ばれます。
比較的新しいお薬で肝臓で作られるアンジオテンシノーゲンがアンジオテンシンⅠに変換されるのを妨げるお薬です。
作用する場所が似ているACE阻害薬、ARBとの併用する場合は注意が必要です。
⑤利尿薬(フルイトラン、ナトリックス、ヒドロクロロチアジドなど)
フルイトラン、ナトリックス、ヒドロクロロチアジドなどとして処方されます。
利尿薬は、古くから使用されており体内の過剰な塩分と水分を取り除くことで血圧をしっかり下げてくれます。
体の中の電解質異常をきたしやすく、第1選択薬として処方されることは稀で他の降圧薬と併用して使用します。
高血圧に用いられる利尿薬には①サイアザイド系利尿薬、②ミネラル受容体拮抗薬の2種類があります。
それぞれに特徴があり患者さんの病態に合わせて処方していきます。
サイアザイド系利尿薬は低K血症のリスクがあっため、ミネラル受容体拮抗薬が開発されました。ミネラル受容体拮抗薬のアルダクトンは心筋保護作用、ミネブロは腎保護作用もあり注目されています。
ミネラル受容体拮抗薬の副作用としては尿へのカリウムの排泄が抑制され高K血症のリスクもあるため定期的な採血も必要となります。
その他利尿薬の副作用として高血糖や尿酸値の上昇による痛風のリスク上昇、脱水症、頻尿などがあります。
⑥α遮断薬(カルデナリン、エブランチル、ミニプレスなど)
カルデナリン、エブランチル、ミニプレスなどとして処方されます。
体が活発に運動したときに働く神経が交感神経です。
この交感神経の伝達物質(アドレナリンなど)がそれぞれの臓器の受容体に働くことによって、活発に運動したときの様な興奮状態になります。
この受容体にはα受容体とβ受容体がありα受容体は血管に多く存在します。
α遮断薬は、血管壁の緊張を和らげることにより血圧を低下させます。
その他の作用としてα遮断薬は、男性の排尿障害の原因になる前立腺肥大症の治療に使用されます。
副作用として頻脈、めまい、ふらつき、眠気、起立性低血圧などが報告されています。
⑦β遮断薬(メインテート、インデラルなど)
メインテート、インデラルなどとして処方されます。
体が活発に運動したときに働く神経が交感神経です。
この交感神経の伝達物質(アドレナリンなど)がそれぞれの臓器の受容体に働くことによって、活発に運動したときの様な興奮状態になります。この受容体にはα受容体とβ受容体があります。
β遮断薬は心臓に直接作用し心臓の動きを緩やかにして負担を減らすことで血圧を下げます。
そのため慢性心不全などの治療でも使用されます。
注意しなければいけない点として糖代謝や脂質代謝に悪影響を及ぼすことがあり糖尿病で治療中の方には採血などで慎重な経過観察が必要です。
休薬、中止の場合も狭心症などの心臓発作や不整脈などが起こることもあるとされており注意が必要です。
副作用として、めまい、頭痛、不眠、徐脈、喘息発作、低血糖、体重増加などが報告されています。
⑧αβ遮断薬(アーチスト、アロチノールなど)
アーチスト、アロチノールなどとして処方されます。
体が活発に運動したときに働く神経が交感神経です。
この交感神経の伝達物質(アドレナリンなど)がそれぞれの臓器の受容体に働くことによって、活発に運動したときの様な興奮状態になります。
この受容体にはα受容体とβ受容体があります。
αβ遮断薬はα受容体遮断による血管壁の緊張を和らげる作用と、β受容体遮断による心臓の動きを緩やかにする作用の両方を持ち合わせてもち血圧を下げます。
薬によってそれぞれの特徴が異なり、アーチストは虚血心筋の保護作用など多様な作用をもつとされ高血圧症以外にも、狭心症、頻脈性の心房細動、虚血性心疾患などによる慢性心不全などにも使用されています。アロチノロールは震え(本態性振戦)の治療に用いられています。
副作用として頻脈、めまい、ふらつき、眠気、起立性低血圧などが報告されています。
⑨配合剤
配合剤は異なる作用のお薬を一つの薬にすることによって飲みやすくしたお薬です。
初回から使用するとそれぞれのお薬の何が効果があるのかが分かりづらくなったり、血圧が一気に下がりすぎる可能性があるため初めは単剤で治療を開始します。
現在以下の4種類が市販されています。
- Ca拮抗薬+ARB(アイミクス、ミカムロ、ザクラス、エックスフォージ、レザルタス)
- ARB+利尿薬(プレミネント、エカード、ミコンビ)
- Ca拮抗薬+ARB+利尿薬(ミカトリオ)
- Ca拮抗薬+スタチン(コレステロール低下薬)(カデュエット)