脂質異常症・高コレステロール血症
40代・50代必読!「ただのコレステロール」と侮ると危険?命を守るための5つの真実
皆さん、こんにちは。青葉おおしお総合クリニック院長の大塩です。 働き盛りの世代にとって、健康診断の結果は少し気が重いものかもしれません。特に「脂質異常症(高脂血症)」の判定が出ても、「痛みもないし、まだ大丈夫だろう」と様子を見てしまってはいませんか?
私はこれまで大学病院や地域中核病院で、多くの救急患者さんを診てきました。その経験から断言できるのは、「サイレントキラー(静かなる殺し屋)」である動脈硬化の怖さと、早期発見・治療の絶大なメリットです。 今日は、皆さんの健康寿命を守るために、脂質異常症について知っておくべき5つのことをお話しします。
脂質異常症に関するQ&A
Q1 なぜ脂質が高いと治療しないといけないのですか?
Answer: 「がん」に匹敵する死亡原因となる恐怖があります。
健康診断で数値が高いと指摘されても、痛くも痒くもないためピンとこない方が多いのが現実です。しかし、治療の最大の目的は、「将来起こりうる心筋梗塞や脳梗塞を防ぎ、突然死や寝たきりを回避すること」に尽きます。
日本人の死因において、高血圧症を除く動脈硬化が原因となる心疾患や脳血管疾患は、総死亡の約20.5%を占めています。これは、死因第1位の「がん(約23.4%)」に匹敵する数字です。 人生100年時代と言われますが、もし心筋梗塞や脳梗塞を発症してしまうと、一命を取り留めたとしても麻痺が残ったり、心臓の機能が落ちたりして、元気に活動できる「健康寿命」が一瞬にして奪われてしまいます。
参考資料:「令和6年(2024年)人口動態統計月報年計(概数)」厚生労働省2025.6.4より引用
糖尿病、高血圧、喫煙なども動脈硬化のリスクですが、脂質異常症はそれらの中でも特に重要な危険因子であることが、数多くの臨床研究で証明されています。 逆に言えば、早期に脂質をコントロールすることで、血管を若々しく保ち、これらの恐ろしい病気を未然に防ぐことができるのです。「まだ大丈夫」ではなく「今がチャンス」と考えて、早めの受診をお勧めします。
Q2 脂質異常症になるとどんな症状が出ますか?
Answer: 最大の敵は「無症状」であることです。
脂質異常症の最も恐ろしい点は、基本的に自覚症状がほとんどないということです。血圧が高ければ頭痛がしたり、血糖が高ければ喉が渇いたりとサインが出ることもありますが、コレステロールが高くても体調の変化はまず感じません。 そのため、気づかないうちに血管の壁に脂質がヘドロのように溜まり、血管が硬く狭くなる「動脈硬化」が静かに、しかし確実に進行していきます。そしてある日突然、血管が詰まり、心筋梗塞や脳梗塞として発症するのです。
ただし、一部の方(特に家族性高コレステロール血症の方など)には、目に見えるサインが出ることがあります。
- 黄色腫(おうしょくしゅ): まぶたに黄色い膨らみができたり、アキレス腱が通常より分厚くなったりします。
- 角膜輪(かくまくりん): 黒目のふちに沿って、コレステロールの白い色素が沈着し、白い輪っかのように見えることがあります。
これらに気づいた場合は、動脈硬化のリスクが非常に高い状態である可能性があります。すぐに当クリニックへご相談ください。
Q3 脂質異常症の原因はなんですか?
Answer: 「内臓脂肪」と「遺伝」が血管を壊します。
原因は大きく分けて「生活習慣」と「遺伝」の2つがあります。
- 生活習慣(環境要因) 食べ過ぎ、飲み過ぎ、運動不足などが主な原因です。特に40代以上の男性に多い、お腹がぽっこり出る「リンゴ型肥満(内臓脂肪型肥満)」は要注意です。内臓脂肪が蓄積すると、悪玉(LDL)コレステロールや中性脂肪が増え、逆に血管を掃除してくれる善玉(HDL)コレステロールが減ってしまうという悪循環に陥ります。
- 遺伝的要因(家族性高コレステロール血症など) 「痩せているのにコレステロールが高い」「食事に気をつけているのに下がらない」という方は、遺伝的要因が疑われます。特に**「家族性高コレステロール血症」**は、遺伝的に血液中のLDLコレステロールが著しく高くなる病気で、若い方でも心筋梗塞のリスクが高まります。 ご家族に脂質異常症の方や、比較的若くして(男性55歳未満、女性65歳未満)心筋梗塞を起こした方がいる場合は、このタイプの可能性が高いです。一般的な健診だけでなく、専門的な診断を受けることが命を守る鍵となります。Q4 脂質異常症はどのように診断しますか?
Q4 脂質異常症はどのように診断しますか?
以下の基準で診断します。
LDLコレステロール
- 140mg/dL以上:高LDLコレステロール血症
- 120~139mg/dL:境界域高LDLコレステロール血症
HDLコレステロール
- 40mg/dL未満:低HDLコレステロール血症
トリグリセライド
- 150mg/dL以上(10時間以上絶食の空腹時採血)または175mg/dL以上(随時採血):高トリグリセライド血症
Non-HDLコレステロール
- 170mg/dL以上:高non-HDLコレステロール血症
- 150~169mg/dL:境界域高non-HDLコレステロール血症
Q5 L/H比やnon-HDLコレステロールとは何ですか?
Answers: LDL正常でも安心は禁物!隠れた指標です。
健康診断では「LDL(悪玉)」と「HDL(善玉)」の数値が注目されがちですが、最近の医学では、この2つのバランスや全体量を重視する指標が重要視されています。
① L/H比(エル・エイチ比) 「LDL(悪玉)÷ HDL(善玉)」で算出される比率です。 LDLが正常範囲内でも、血管の掃除役であるHDLが少なければ、動脈硬化のリスクは高まります。
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L/H比 1.5以下: 理想的です。
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L/H比 2.0以上: 動脈硬化のリスクが増大
- L/H比 2.5以上: 血栓ができやすく、心筋梗塞のリスクが非常に高い状態 当院では、単なる数値だけでなく、このバランスを見て「血管の質」を評価します。
② non-HDLコレステロール 「総コレステロール - HDLコレステロール」で計算されます。 これはLDLだけでなく、中性脂肪の影響を受けた「超悪玉」と呼ばれる脂質なども含めた、**「動脈硬化を引き起こす全ての悪い脂質の総量」**を表します。 特に中性脂肪が高い方(空腹時400mg/dL以上など)や、食後採血の場合は、LDLの値が正確に出ないことがあるため、このnon-HDLコレステロールが非常に信頼できる指標となります。
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基準値:170mg/dL以上 で高non-HDLコレステロール血症と診断されます。
Q5 脂質異常症の治療にはどんなものがありますか?
Answer: 血管は適切な治療で「若返りの可能性」があります。
「薬を飲み始めたら一生やめられない」と不安に思う方も多いですが、治療の目的は薬を飲むことではなく、動脈硬化を止めることです。
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生活習慣の改善(食事・運動) 治療の基本はまずここからです。
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食事療法: 青魚(EPA/DHA)、大豆製品、野菜、海藻を積極的に摂り、動物性脂肪(肉の脂身やバター)やトランス脂肪酸(マーガリン、スナック菓子)を控えます。
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運動療法: 1日30分程度の有酸素運動(ウォーキングなど)は、善玉コレステロールを増やし、中性脂肪を減らす効果があります。
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薬物療法 生活習慣の改善で十分な効果が出ない場合や、すでに動脈硬化のリスクが高い場合は、お薬を検討します。
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スタチン系: 世界中で最も多く使われている、LDLコレステロールを強力に下げるお薬です。動脈硬化の予防効果が確立されています。
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フィブラート系・EPA製剤: 主に中性脂肪を下げるために使われます。
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小腸コレステロールトランスポーター阻害薬: コレステロールの吸収を抑えるお薬です。
最近の研究では、適切な治療によって「一度厚くなった血管の壁が薄くなり、動脈硬化が改善する可能性がある」ことも分かってきています。 当院では、患者さんのライフスタイルやリスクに合わせて、無理なく続けられるオーダーメイドの治療計画をご提案します。
院長よりメッセージ 脂質異常症は、症状がないからこそ、プロフェッショナルによる評価と管理が必要です。 「まだ若いから」「忙しいから」と後回しにせず、将来のご自身とご家族のために、ぜひ一度ご相談ください。私たちが全力でサポートいたします。
文責:青葉おおしお総合クリニック 院長 大塩 博
参考文献 :動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版. 日本動脈硬化学会
