潰瘍性大腸炎(UC)
「ただの下痢」と放置していませんか?急増する指定難病「潰瘍性大腸炎」を正しく知って、安心な毎日を。
Q1 潰瘍性大腸炎の原因は何ですか?
Answer: 「免疫の暴走」が腸を攻撃しています。
「お腹が弱い体質なのかな?」と、ご自身を責めてしまっている方はいらっしゃいませんか。 潰瘍性大腸炎は、本来ならウイルスや細菌から体を守るはずの「免疫システム」が、誤って自分の大腸の粘膜を攻撃してしまうことで炎症が起きる病気と考えられています。これを「自己免疫反応の異常」と呼びます。
かつては欧米に多い病気でしたが、食生活の欧米化などに伴い、日本でも患者数が急増しています。現在、日本国内には約22万人以上の患者さんがいると推計されており(指定難病の中で最も多い疾患です)、決して珍しい病気ではありません。 発症には、遺伝的な「なりやすさ」に加えて、食事、腸内細菌の変化、ストレスなどの環境因子が複雑に関わっているとされています。「何を食べたから悪い」「うつった」というものではありませんので、ご安心ください。 原因が完全に特定されていないため「指定難病」とされていますが、研究が進み、適切な治療を行えば健康な人と変わらない生活を送ることが十分に可能です。
Q2 潰瘍性大腸炎の症状はありますか?
Answer: 「続く下痢と血便」は迷わず受診を!
最も特徴的な症状は、「下痢」と「血便(便に血が混じる)」です。これに「腹痛」を伴うことが多くあります。 「痔だろう」「仕事のストレスでお腹が緩いだけだ」と考えて様子を見てしまい、発見が遅れるケースが非常に多く見受けられます。
具体的な症状としては以下のようなものがあります。
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持続する下痢、軟便
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血便、粘血便(ドロッとした粘液と血が混ざる)
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腹痛(特にお腹の左側や下腹部)
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しぶり腹(便意があるのに便が出ない、出てもすっきりしない)
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発熱、体重減少、貧血(重症化した場合)
症状は、良くなったり(寛解)、悪くなったり(再燃)を繰り返すのが特徴です。「治ったかな?」と思っても、腸の中では炎症がくすぶっていることがあります。 40代・50代の働き盛りの方にとって、トイレの回数が増えることはQOL(生活の質)を著しく下げる要因になります。これらの症状が続く場合は、一人で悩まずに早めにご相談ください。Q3 潰瘍性大腸炎の診断はどのように行いますか?
Q3 潰瘍性大腸炎の診断はどのように行いますか?
Answer: 「大腸カメラ」が確定診断の決め手です。
問診で症状を詳しく伺った上で、血液検査(炎症反応や貧血の有無)、便検査(細菌感染ではないかの確認)を行いますが、診断を確定させるためには**「大腸内視鏡検査(大腸カメラ)」**が不可欠です。
当院では、患者様の苦痛を最小限に抑えるよう、熟練した技術と適切な鎮静剤を用いて検査を行います。 内視鏡で大腸の粘膜を直接観察し、炎症の広がりや強さを確認します。潰瘍性大腸炎の場合、直腸(お尻の出口に近い部分)から連続して奥に向かって炎症が広がっているのが特徴的です。また、検査中に粘膜の一部を少しだけ採取(生検)し、顕微鏡で細胞レベルの検査を行うことで、他の腸炎やクローン病などと区別し、診断を確定させます。
「カメラは怖い」というイメージをお持ちかもしれませんが、早期に診断し適切な治療を始めることが、将来的な重症化や手術、さらには大腸がんのリスクを防ぐことにつながります。
Q4 潰瘍性大腸炎の治療はどのようなものがありますか?
Answer: 「粘膜を治す」ことで普通の生活へ。
治療の目標は、単に下痢や腹痛を止めるだけでなく、大腸の粘膜の炎症を完全に消失させる「粘膜治癒」です。 治療法は、重症度や炎症の範囲によって選択されますが、基本は**「薬物療法」**です。
主な治療薬
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5-ASA製剤(基本のお薬): 腸の炎症を抑える基本薬です。飲み薬のほか、病変が肛門に近い場合は座薬や注腸剤も併用します。軽症から中等症の多くの方は、このお薬でコントロール可能です。
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ステロイド薬(炎症を強力に抑える): 炎症が強い活動期に使用します。即効性がありますが、副作用の観点から漫然と長期使用するものではなく、短期決戦で炎症を沈静化させるために用います。
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免疫調節薬・生物学的製剤(分子標的薬): 従来の治療で効果が不十分な場合に使用します。過剰な免疫反応をピンポイントで抑える注射や点滴、飲み薬など、近年画期的な新薬が次々と登場しており、治療の選択肢は劇的に広がっています。
難病ではありますが、糖尿病や高血圧の治療と同じように、自分に合ったお薬を適切に使い続けることで、仕事や趣味、食事を楽しみながら生活されている患者様がたくさんいらっしゃいます。
Q5 潰瘍性大腸炎の予後は?よくなってから再発しますか?
Answer: 「寛解」の維持が、人生を守ります。
潰瘍性大腸炎は、症状が治まっている**「寛解(かんかい)」と、再び症状が悪化する「再燃(さいねん)」**を繰り返す病気です。 残念ながら、現時点では「完治(薬を飲まなくても二度とならない状態)」させる方法は確立されていません。しかし、適切な治療を継続することで、寛解状態を長く維持することは十分に可能です。
最も大切なことは、「症状が消えたからといって、自己判断で薬を止めないこと」です。 多くの再燃の原因は、服薬の中断です。自覚症状がなくても、腸の粘膜には火種が残っていることがあります。ここで治療を続けて火種を消し続けることが、再発を防ぎ、将来的な大腸がんのリスクを低減させることにつながります。
長いお付き合いになる病気ですが、私たち専門医がパートナーとして伴走します。定期的な検査と服薬でコントロールできれば、決して怖い病気ではありません。一緒に「健康な人と変わらない明日」を目指しましょう。
文責:青葉おおしお総合クリニック 院長 大塩 博
参考ガイドライン・出典
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炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2023(改訂版). 日本消化器病学会
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潰瘍性大腸炎・クローン病 診断基準・治療指針(令和5年度改訂版). 厚生労働省「難治性炎症性腸管障害に関する調査研究」班
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難病情報センター(指定難病97 潰瘍性大腸炎)文責
