乳腺葉状腫瘍
青葉おおしお総合クリニックの院長です。乳腺疾患で皆さんにどうしても知っておいていただきたい病気があります。 それは「乳がん」ではありませんが、放置すると大変なことになる「葉状腫瘍(ようじょうしゅよう)」です。
「胸にしこりがあるけれど、痛くないから大丈夫」 「以前、良性のしこりと言われたから放置している」
そんな方にこそ読んでいただきたい記事です。正しい知識を持ち、適切なタイミングで受診することが、あなたとご家族の笑顔を守ります。
【胸のしこり】急に大きくなったら要注意!乳がんとは違う「葉状腫瘍」の正体とは?
Q1 乳腺葉状腫瘍の原因・特徴は何ですか?
Answer: 「数ヶ月で急激に大きくなる」それが最大の特徴です。
乳腺葉状腫瘍(ようじょうしゅよう)は、全乳腺腫瘍の1%未満という非常に稀な病気です。 多くの女性が心配される「乳がん」とは異なり、乳管(ミルクの通る管)の周りにある成分が増殖してできる腫瘍です。 はっきりとした原因はまだ解明されていませんが、女性ホルモンの影響が関係していると考えられています。30代〜50代の幅広い年齢層に発生しますが、特に40代以降の方に多く見られる傾向があります。
この腫瘍の厄介な点は、初期の段階では、非常によくある良性のしこり「線維腺腫(せんいせんしゅ)」と見分けがつきにくいことです。しかし、線維腺腫が何年も大きさが変わらないことが多いのに対し、葉状腫瘍は「今まであったしこりが、ここ数ヶ月で急に大きくなった」という経過をたどることがよくあります。
「良性だから安心」と自己判断せず、変化を感じたらすぐに医師に見せることが重要です。
Q2 葉状腫瘍の症状と癌との違いは?
Answer: 放置するとボールのように巨大化し皮膚を突き破ることも。
最も一般的な症状は、乳房の「しこり」です。痛みはほとんどありません。 しかし、乳がんのしこりが「石のように硬い」ことが多いのに対し、葉状腫瘍は「コロコロとしていて、比較的境界がはっきりしている」ことが多いです。
最大の違いはその増殖スピードです。 最初は1〜2cmだったしこりが、短期間で10cm以上に巨大化することがあります。腫瘍が大きくなると、皮膚が引き伸ばされて薄くピカピカと光って見えたり、静脈が浮き出て青く見えたりします。さらに放置すると、腫瘍が皮膚を突き破り、潰瘍(傷)を作って出血することさえあります。
また、葉状腫瘍には「良性」「境界病変」「悪性」の3つのタイプがあります。 大半は良性ですが、悪性の場合は、肺などの遠くの臓器に転移するリスクがあります。乳がんはリンパ節に転移しやすいですが、悪性葉状腫瘍は血液に乗って肺へ転移しやすいという違いがあります。 「良性」であっても、巨大化して生活に支障をきたすため、決して放置してはいけない病気なのです。
Q3 乳腺葉状腫瘍の診断はどのように?
Answer: 当院では乳腺エコーを中心とした画像検査で診断します。
「もしかしたら」という不安を「安心」に変えるために、当院では下記の通り精密な検査を行います。
- 乳腺超音波検査(エコー)線維腺腫の診断において非常に有用です。放射線の被曝もなく、痛みもありません。しこりの内部構造や血流の有無をリアルタイムで確認し、典型的な葉状腫瘍の像であるかチェックします。しかしながら超音波検査だけでは、当院院長はNPO法人日本乳がん検診精度管理機構乳房超音波技術試験A判定を取得しており確実な診断を行っておりますが、良性の「線維腺腫」と区別することが非常に難しい場合があります。画像上はどちらも「つるっとしたしこり」に見えるからです。
- 造影乳房MRI検査. 乳腺超音波検査で「線維腺腫・葉状腫瘍の疑いが強いが、がんも完全には否定できない」場合に行います。造影乳房MRIは感度(癌を癌と判定する能力)が極めて高く少しでも癌が疑われる場合は精検施設にご紹介いたします。
Q4 どのような治療法がありますか?
Answer: 薬は効きません。手術で「完全に」取り切るのが唯一の道。
ここが非常に重要なポイントです。 乳がんには抗がん剤やホルモン療法などの薬物療法がありますが、葉状腫瘍には効く薬がありません。 放射線治療も効果は限定的です。 したがって、治療の基本は**「手術による完全切除」一択となります。
手術の際、単にしこりだけをくり抜けば良いのではありません。 葉状腫瘍は、目に見えるしこりの周囲に、顕微鏡レベルで小さな「根っこ」を張っていることがあります。もし腫瘍ギリギリで切除してしまうと、残った根っこから再発してしまうのです。 そのため、腫瘍の周りの正常な乳腺組織を一緒に含めて、余裕を持って広く切除する(マージン確保)必要があります。
腫瘍が巨大な場合や、悪性で範囲が広い場合は、残念ながら乳房全体を切除(全摘)せざるを得ないこともあります。
Q5 手術後の経過や予後はどうですか?
Answer: 「良性」と言われても油断禁物。しつこく「再発」します。
葉状腫瘍の最大の特徴であり、怖いところは**「再発しやすい」**ことです。 手術で取り切ったと思っても、同じ場所にまたできてしまうこと(局所再発)があります。 報告によると、良性で数%〜10%程度、悪性では20〜30%程度の再発率があるとされています(乳癌診療ガイドライン2025参照)。
たとえ病理検査の結果が「良性」であっても、再発を繰り返すうちに、性格が変わって「悪性」に変化することもあります(悪性転化)。 悪性の場合、肺や骨などに転移すると命に関わります。
そのため、手術が終わったら「治った、終わり」ではありません。 最低でも数年間、半年から1年ごとの定期検診が絶対に必要です。
もし、胸のしこりが気になっている方、昔からのしこりが最近大きくなったと感じる方は、迷わず当院へご相談ください。
【参考資料】乳癌診療ガイドライン2025年版(日本乳癌学会)
文責;青葉おおしお総合クリニック 院長 大塩 博
