クローン病
青葉おおしお総合クリニック院長の私にお任せください。 大学病院、地域の中核病院で消化器疾患の診療に携わってきた経験をもとに、専門的な内容を噛み砕き、患者様の不安を取り除けるような記事を作成いたしました。
Q1 クローン病の原因は何ですか?
Answer: 原因不明?免疫の異常が鍵です
クローン病は、口から肛門までの消化管のあらゆる場所に炎症や潰瘍(ただれ)ができる病気です。 「なぜ私がクローン病に?」と悩まれる患者様は非常に多いのですが、残念ながら現時点では、はっきりとした原因は完全には解明されていません。
しかし、近年の研究で**「遺伝的な要因」に、食事や喫煙などの「環境的な要因」が重なり、腸の「免疫システムが異常な反応」**を起こすことで発症すると考えられています。 本来、細菌やウイルスから体を守るはずの免疫細胞が、何らかのきっかけで自分自身の腸の壁を攻撃してしまうのです。
特に、動物性脂肪の多い食生活や、喫煙習慣が発症のリスクを高めると言われています。 ここで大切なのは、「誰かにうつる病気ではない」ということです。また、完全に「あなたの生活習慣が悪かったせい」というわけでもありません。複雑な要因が絡み合って起こる病気ですので、ご自身を責めず、正しい治療に向き合うことが大切です。 近年、日本でも患者数が増加傾向にあり、決して珍しい病気ではなくなってきています。
Q2 クローン病の症状はありますか?
Answer: 続く腹痛と下痢は危険信号!
クローン病の症状は、炎症が起きている場所によって様々ですが、代表的なSOSサインがあります。
最も多いのは、長期間続く腹痛と下痢です。 「ただのお腹の風邪かな?」と思って市販薬で様子を見ていても、1ヶ月以上症状が改善しない場合や、夜も眠れないほどの腹痛がある場合は注意が必要です。また、栄養が吸収できなくなるため、食べているのに体重が減っていく、微熱が続くといった全身の症状も見られます。
さらに、特徴的なのが**「お尻のトラブル」**です。 クローン病の患者様の多くに、痔ろう(あな痔)や肛門周囲膿瘍(お尻に膿がたまる)などの肛門病変が見られます。「ただの痔だと思っていたら、実はクローン病だった」というケースは、当院でも珍しくありません。
若い方で、治りにくい痔や、繰り返す下痢・腹痛がある場合は、決して我慢せずに専門医を受診してください。早期発見が、その後の生活の質を大きく左右します。
Q3 クローン病の診断はどのように行いますか?
Answer: 痛みの少ない内視鏡で確定診断
クローン病かどうかを診断するには、問診や血液検査だけでなく、お腹の中を直接見る検査が不可欠です。
- 血液検査炎症の強さを測るCRPという数値や、貧血の有無、栄養状態などを確認します。
- 内視鏡検査(大腸カメラ・胃カメラ)これが最も重要な検査です。クローン病では、腸の中に**「縦長の潰瘍(縦走潰瘍)」や、石を敷き詰めたようなデコボコした病変(敷石像)**が見られます。また、病変が飛び飛びに現れるのも特徴です。 当院では、鎮静剤を使用し、苦痛の少ない内視鏡検査を行っていますのでご安心ください。
- 画像検査(CT・MRI)内視鏡が届かない小腸の病変や、腸の外側の合併症(膿がたまっていないか等)を確認します。
これらの検査結果と、厚生労働省の診断基準を照らし合わせて総合的に診断します。 「検査が怖い」と受診をためらわれるお気持ちはよく分かりますが、診断がつかずに放置してしまうと、腸が狭くなったり穴が開いたりする深刻な事態になりかねません。まずは一度、ご相談ください。
Q4 クローン病の治療はどのようなものがありますか?
Answer: 劇的に進化!普通の生活が可能に
「難病」と聞くと、「一生治らない、怖い病気」というイメージを持たれるかもしれません。確かに完治させる方法はまだ見つかっていませんが、医学の進歩により、症状がない状態(=寛解:かんかい)を長く維持し、健康な人と変わらない生活を送ることが十分に可能になっています。
治療の柱は以下の2つです。
- 栄養療法腸を休ませる治療です。脂肪分を抑えた食事制限や、消化の必要がない「成分栄養剤(エレンタールなど)」を飲むことで、腸への刺激を減らし、栄養状態を改善します。
- 薬物療法炎症を抑える「5-ASA製剤」、炎症を強力に鎮める「ステロイド」、免疫の働きを整える「免疫調節薬」などを使います。 さらに、近年登場した**「生物学的製剤(バイオ医薬品)」**は治療を劇的に変えました。これは、炎症を引き起こす特定の物質をピンポイントでブロックする注射や点滴の薬です。これにより、以前なら手術が必要だったような重症の患者様でも、高い確率で症状を抑え込めるようになりました。
腸が極端に狭くなったり、穴が開いたりした場合は手術が必要になりますが、早期に適切な治療を始めれば、手術を回避できる可能性が高まります。
当院では東北でも有数の消化器病センターである東北労災病院や仙台医療センターの先生方と連携をとりながら治療をすすめていきます。
Q5 クローン病の予後は?よくなってから再発しますか?
Answer: 自己判断での中断が一番怖い!
クローン病は、良くなったり(寛解)、悪くなったり(再発)を繰り返す慢性の病気です。 治療によって症状が消え、「もう治った!」と思って治療を止めてしまうと、高い確率で再発してしまいます。
再発を繰り返すと、腸が変形して狭くなり、最終的には手術が必要になったり、短腸症候群といって栄養吸収ができなくなったりするリスクがあります。 ですので、**「症状がない時こそ、治療を続けること」**が最も重要です。これを「寛解維持療法」と呼びます。
医師の指示通りに薬を続け、定期的な検査を受けていれば、仕事も続けられますし、趣味や旅行も楽しめます。女性の患者様であれば、妊娠・出産も十分に可能です。 実際に当院に通院されている多くの患者様も、病気と上手に付き合いながら、社会で活躍されています。
文責 : 青葉おおしお総合クリニック 院長 大塩 博
索引(参考文献・ガイドライン) 本記事は以下のガイドラインおよび医学的エビデンスに基づき作成しています。
- 日本消化器病学会 編:炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2020, 南江堂, 2020.
- 厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患政策研究事業「難治性炎症性腸管障害に関する調査研究」班:潰瘍性大腸炎・クローン病 診断基準・治療指針(令和5年度改訂版).
- 難病情報センター(指定難病96 クローン病)
